ローマ人の物語 塩野七生
ローマ人の物語は全10巻。古代ローマの勃興から衰亡までを描いた歴史物語だ。通勤中やジムの休憩時間など、ほんの隙間時間を見つけては、数年掛けて読み進めた。やはり抜群に面白いのは、共和政から帝政に変わる時期、カエサルの所行を説明した4巻と5巻だ。(次いでハンニバルの2巻)。塩野七生さんの筆も乗っていて、とてつもなく素晴らしい物語に仕上げている。カエサルという人は日本ではあまり類型をみないタイプの英雄だ。野心があり、明るく、人たらしであり、清廉潔白ではなく、狡猾で柔軟で、人生の確信を持った人物だ。それは彼自身が書き記している、自らの考えに忠実に生きたからだとおもう。心に残った名言を書き留めていきたい。
歴史は時に、突如一人の人物の中に自らを凝縮し、世界はその後、この人の指し示した方向に向かうといったことを好むものである。これら偉大な個人においては、普遍と特殊、留まるものと動くものとが、一人の人格に集約されている。
世界史についての諸考察 ブルクハルト
様々な歴史物語はこの思想をベースに作られていると思う。竜馬がゆく、坂の上の雲もその類型の物語だ。まさしくカエサルはこの思想を体現した人物であった。
野心とは、何かをやり遂げたいと思う意志であり、虚栄とは、人々から良く思われたいという願望である。
ローマ人の物語 塩野七生
カエサルとポンペイウスの違いを現した見事な表現。カエサルは虚栄心がなかったのではなく、それ以上に強大な野心があった。
何ものにもましてわたしが自分自身に課しているのは、自らの考えに忠実に生きることである。だから、他の人々も、そうあって当然と思っている
ローマ人の物語 カエサル
意味合いが深い。カエサル自身の最期すらも内包している。
人間は、自分が見たいと欲する現実しか見ない
ローマ人の物語 カエサル
一番有名な名言。カエサルは、対峙した相手がどのような現実を見ているかを分かっていた。
来た、見た、勝った
ローマ人の物語 カエサル
VENI,VIDI,VICI
おまけ 車谷長吉の人生相談 人生の救い
世の中の多くの人は、自分の生はこの世に誕生した時に始まった、と考えていますが、実はそうではありません。生が破綻した時に、はじめて人生が始まるのです。従って破綻なく一生を終える人は、せっかく人間に生まれてきながら、人生の本当の味わいを知らずに終わってしまいます。気の毒なことです。
車谷長吉の人生相談
何故か心に留まり続ける言葉。好きになった女生徒と出来てしまえば、それでよいのです。あなたは小利口な人です。
コメント