スポンサーリンク

才能の美しさ残酷さ儚さを表現する物語 ダンス・ダンス・ダンスール

未分類

才能ある若者の物語を読みたくなることがある。年齢を重ね自分が世界にとって特別でないとわかってしまっても、承認欲求の残滓が身体の片隅に残っていて、時折呼吸をするように疼くからだと思う。ベタだけど、作中登場観客たちが、こいつスゲーって感嘆する物語を欲しくなってしまう。ダンス・ダンス・ダンスールは、そんな欲求を満たしてくれる物語だ。

主人公の潤平は、作中のセリフで表すとこんな人だ。

潤平くんは経験こそないけど、努力でとうにもならないものを、全部持っているんだね、…才能って、本当に残酷だ

才能って、本当に残酷だ。。。い、言われてみたい。

ダンスダンスダンスールはバレエに魅せられた潤平とそれを囲む若者たちの成長物語だ。登場人物たちのバレエへの魅せられ方引き込まれ方が凄い。残念ながら自分はYouTubeで一流プロのバレエを見てもなんら衝撃を受けなかったが、この物語に一旦引き込まれてしまうと、物凄い何か、作中でいう「バレエの真実」が、そこにあるかのように感じてしまう。これこそ漫画にのみ許された物語表現方法の結晶だと思う。

星が、爆ぜる。これは音の命なのか?すべて俺を通りすぎてくれ。同じものをみんなに魅せるから!

もう一人の主人公の流鶯も、潤平の星が爆ぜる何かに、コンプレックスに感じてしまう。彼は自分自身を作られた人形、空っぽだっと感じているからだ。

もしかしてお前の方が、バレエの真実に近いんじゃないかって感じる瞬間がーー

「ざまあみろって思うんだ。全部吐き出せたとき」という流鶯に対して、全肯定してあげる千鶴さんが好きだ。

思いもよらない方向に行くかもしれない。それでも、自分の心に従うのよ。

祈る。彼の叫びがとどろくことを。

潤平のコーチは「ここにいる意味」を問われこう答える。

全身全霊で魂を燃やしきるためだ。生きる、豊かさを愛をもって伝えるためだ。

これはまさしくこの物語を創作する作者自身の叫びだだと感じてしまう。

この物語の行く末を見守りたい、それまでは死ねない、と思わせてくれる数少ない珠玉の物語だ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました