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ルックバック ありえたかもしれないもう一つの可能性の物語

物語

藤本タツキ先生の短編、ルックバックは紛れもなく傑作だと思う。

人はだれもが年を重ねると、あの日あの時あの場面で、別の選択肢を選んでいたらどうなっただろうかと、ありえたかもしれないもう一つの可能性について、思いをはせることがあると思う。
そして人はそれを物語に仮託する。メタ的に描いたりもする。

自分の知る限りでも、ラ・ラ・ランドや、ワンスアポンアタイムインハリウッド、近いところでは大豆田とわこと3人の元夫など、ありえたかもしれないもう一つの可能性を描き、それがストーリーの核となっている物語がある。

ルックバックも一見そのような物語と似たストーリーになっている。
だが、それらの作品と違うのは、ルックバックは、途中どんな道を通っても最終的にはこの道を選択していただろうという、人の業のようなものを描いた物語構造になっているところだ。
あの時、描いた4コマ漫画が京本に渡るか渡らないかで、この物語はもう一つの可能性の物語に分岐する。
しかし、最終的には藤野の作品にインスパイアされた京本が創作した返信の4コマは、どの世界でも創作されるであろうし、それを受けとった藤野が選ぶ道は常に一つだと思う。ドア越しに分岐した物語世界は、こうして再度合流する。

とても綺麗で美しい構造をもった物語だと思う。

また、個別の場面をとってみても、雨の中のスキップの場面、ひたすら机に向かい時が過ぎていく場面(ラスト含む)の描写がとても素晴らしいと感じた。

この物語は、世間で言われている通り、京アニ事件に想起されて創作された物語だと思うが、結果として事件を越えて、普遍的な何かを含んだ素晴らしい物語になった思う。

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